「成分」を調べてから買う人たちへ——この春の美容カートに見える、ちょっと切ない自意識

楽天トレンド

四月も半ばになると、人は不思議と「きちんとしよう」という気持ちに駆られる。新年度の緊張が少しほどけ、でもまだ自己管理への意欲が残っている、あの短い窓。そのタイミングで「スキンケアを見直した」という人がネット通販のレビュー欄に大量に現れるのは、毎年の光景だ。今年の急上昇ランキングを眺めていたら、その「見直し」の質が、ここ数年でじわじわと変わってきていることに気づかされた。

成分名で検索する人が、マジョリティになった

グリシルグリシン6%、アゼライン酸誘導体——そんな化学物質めいた名前が商品タイトルの冒頭に堂々と並ぶ化粧水が、2300件超のレビューを集めて急上昇している(気になる人はここで確認できる)。価格は2,000円。かつてなら「成分の名前が読めない商品は怖い」と感じた層が、今では「成分が明記されていない商品は信用できない」と逆転している。美容系のSNSやYouTubeが数年かけて育てた”成分リテラシー”が、ついにマスの購買行動を動かし始めた証拠だろう。ブランドのイメージではなく、配合濃度と作用機序で化粧水を選ぶ——それはかつての「意識高い系」の振る舞いではなく、もはや標準的な消費行動になりつつある。

「洗い方」に戻る人たちの、静かな反省

オルビスのクレンジングオイルが4.63点という高評価で上位に顔を出している。洗浄力があって、でも肌に優しい。1,000件超のレビューが示すのは、熱狂よりも「信頼の蓄積」だ。数年前、美容業界には「クレンジングは最短で、なるべく刺激を与えずに終わらせるべき」という風潮があった。ところが毛穴詰まりや化粧残りに悩み続けた結果、「実はちゃんと落とせていなかったのでは」と気づいた人が今、クレンジング工程を見直している。スキンケアの工程を増やす方向に走った人が、原点に戻ってきている——その往復の疲れが、1,980円という手の届く価格帯の安心感と相まって、このロングセラーに向かわせているのかもしれない。

15,000件のレビューが証明する「塗ってないように見せたい」という欲望

パウダーファンデーションで15,498件のレビューというのは、異常な数字だ。この数は「たくさんの人が買った」というより「たくさんの人が何かを確かめたかった」という気配がある。崩れにくい、カバーできる、でも厚塗り感はいらない——その三角形の中に正解を探し続ける人間の業のようなものを、このレビュー数は体現している。日本の女性が「ナチュラルメイク」と呼ぶものの多くは、実際には相当な手間と技術と製品選びの末に到達する「すっぴん風」であって、その努力を努力と気づかせないことへの執着は、もはや文化的な現象と呼んでいい。

女性の薄毛が「言えるようになった」ことの、少し遅すぎる前進

女性用育毛剤が急上昇しているという事実は、商品そのものより、その背景にある変化の方が興味深い。産後、30代、40代、50代、60代——商品説明に並ぶターゲット層の幅広さは、これが「一部の人の問題」ではないことを示している。抜け毛や薄毛に悩む女性は以前からいたが、それを公に検索し、商品を買い、レビューを書くことへの心理的ハードルが下がったのはここ数年のことだ。コロナ禍の影響でヘアロスを経験した人が増えたこと、加齢を「隠すもの」から「対処するもの」へと捉え直す空気感が少しずつ醸成されたこと。5,820円という価格を出せる人が789件のレビューを書いているという現実は、この悩みがどれだけ切実かを無言で語っている。

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売れ筋を眺めていると、人々が「きれいになりたい」のではなく「なぜうまくいかないのかを理解したい」という欲求で動いていることが分かる。美容はとっくに、自己投資でも娯楽でもなく、自分の身体を解読しようとする、地味で執念深い営みになっている。

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