なぜ新年度の初週、日本人のカートには「備え」と「汚れ落とし」が入るのか

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四月の第一週というのは、不思議な時間帯だ。新しい手帳を開いたばかりで、まだ何も書かれていない。職場では新しい顔があちこちにいて、自分の席すら少し違う空気がする。そういう「リセットの気配」が漂うとき、人間はなぜか身の回りを整えたくなる。タンスの奥を見直したり、台所のコンロをじっと眺めたりする。そして結局、ネットのカートに何かを放り込む。

水を48本まとめ買いするのは、不安を可視化したいからではないか

富士山の天然水、500ml×48本で2,280円。ラベルレスで備蓄に向いていると書いてある。6,994件ものレビューが付き、評点は4.43という数字は、これがすでに「品質を吟味して選ぶ商品」ではなく「ルーティンとして箱買いする商品」の域に達していることを示している。

気になるのは「備蓄水」という文言の使われ方だ。数年前まで、備蓄を意識するのは防災意識が高い一部の層に限られていた。今は違う。日常の買い物ページに「備蓄」という言葉が堂々と並び、それを誰も奇妙に思わない。能登の記憶が薄れないうちに次の地震報道が来て、南海トラフの話が繰り返されて、人々は「いつかのための水」を普通の日用品として認識するようになった。この商品が売れているのは、防災意識が高まったからではなく、不安が日常化したからだと思う。水を積み上げることで、漠然とした恐れに輪郭を与えているのかもしれない。気になる人はここで実物を確認できる。

見て見ぬふりをしてきた焦げに、なぜ今日手をつけるのか

錫村商店の「THE POWER コゲ落としジェル」、1,780円。レビューはまだ138件だが、評点4.55は高い。新年度に入った直後にこれが上昇しているのは、おそらく偶然ではない。

コンロの五徳の焦げというのは、ある意味で「先送りの象徴」だ。見えている。気になっている。でも今日じゃなくていい、と思い続けてきた。それが四月になると急に「もうそろそろ」という気持ちになる。新年度のリセット感が、「ずっと後回しにしてきたこと」への照準を合わせる。大掃除でもなく、引っ越しでもなく、ただの火曜の夜に、ふと台所のコンロを直視してしまう人間の心理。この洗剤の急上昇は、その気持ちのスパイクをそのまま反映している。

星野源のライブを、もう一度パッケージで持ちたい理由

星野源のJapanツアーBlu-ray、7,524円で評点5.0。レビューはまだ1件だが、それでも急上昇している。

配信でライブ映像を観られる時代に、なぜあえてBlu-rayなのか。答えはたぶんシンプルで、「所有したい体験がある」ということだ。音楽配信で曲を聴くことと、Blu-rayをラックに並べることは、別の行為だ。後者には「この瞬間に自分はいた」という証明の意味合いがある。MAD HOPEという言葉を持つツアーのディスクを棚に置くことは、そのライブの記憶を身体の外側に固定する作業だ。缶バッジが先着特典につくのも、その「固定したい」衝動をうまく突いている。

週末の食卓に、少しだけ豪華な理由

サーモンスライス600g、クーポン後2,990円。レビューゼロの新着商品が急上昇しているのは、価格の訴求力がそれだけ強いということだろう。6パックに分かれた100gずつのスライスは、「今夜だけ、ちょっとだけ贅沢する」という現代の食卓の作法に合っている。外食はためらうが、家で良いものを食べることへのハードルは下がった。いわゆる「内食贅沢」の文脈で、半額クーポンという言葉が引き金になって手が動く。

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四月の第一週のカートの中身を見ると、日本人が今どんな気分で生きているかが透けて見える。不安を水に変えて積み、後回しにしてきた焦げに向き合い、体験の記憶をディスクに焼き、平日の夜に少しだけ贅沢なサーモンを切る。それぞれ別々の商品だが、どれも「今の自分を少しだけ整えたい」という同じ気持ちから来ている気がしてならない。

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