4月も半ばになると、世の中は「新生活」という言葉を使い終える。家電量販店の特需は落ち着き、入学・就職の興奮も薄れ、人々は静かに「日常」という名の現実と向き合い始める。そのタイミングで、ネット通販の家電ランキングに顔を出してくる商品の顔ぶれが、妙に面白い。派手さはない。でも、確実に何かを映している。
お湯を「何℃で飲むか」にこだわり始めた人たちのこと
電気ケトルに7段階の温度調節がついている、という事実を5年前に聞かされたとしたら、「そこまで必要か?」と思った人がほとんどだったはずだ。それが今、4,980円(クーポン適用で3,980円)という価格帯で、2,000件超のレビューを集めながら楽天1位に座っている。何かが変わった。変わったのは商品ではなく、飲み物との関係性だ。緑茶は70℃、白茶は80℃、コーヒーは92℃——この知識が「マニアの話」から「ふつうの人の話」になったとき、ケトルはただの「お湯を沸かす機械」ではなくなる。4時間保温・二重構造という機能への4.4点の評価は、「ちゃんとやりたい」という静かな意志の集積だと思う。
発酵食品をつくる人が増えている、というよりも
ヨーグルトメーカーがここまで売れ続けているのは、健康ブームで説明しきれない部分がある。タニカのヨーグルティアS(ガラスセット)は14,960円、レビュー2,854件で4.81点。この点数の高さは「壊れない・使いやすい」という基本性能への信頼だが、2,854人という数字は「買った人がそれだけいる」という事実を静かに主張している。甘酒、塩麹、納豆、チーズ、味噌——この商品が対応する食品の多様さは、「発酵に興味がある人」というよりも「つくることそのものに意味を見出している人」の輪郭に重なる。スーパーで買えばいいものを、時間と手間をかけてつくる。その非効率さこそが、今の生活者が求めているものの正体かもしれない。
美容室に行かなくなったのではなく、「行く理由」が変わった
クレイツのカールプロSRは26mm・32mm・38mmの3サイズ展開で10,780円。公式店限定・最大2年保証という条件がついており、レビュー数139件はまだ少ないが4.65点という高評価は使った人たちの満足度の高さをそのまま示している。ヘアアイロンのこの価格帯は「サロン帰りのスタイルを家で維持する」ためのツールであり、美容室を代替するものではない。「月に1回は美容室に行くけれど、その間の3週間をどう過ごすか」という問いに、1万円強で答えを出せるならそれは安いと判断する人が一定数いる。その人たちはコスパを語らない。ただ、自分の髪に手をかけることに価値を置いている。
下着だけ、靴下だけを洗いたい人の孤独と合理性
小型洗濯機「ウォッシュボーイ」は9,280円、洗濯容量600g。229件のレビューで4.26点。容量600グラムというのは、靴下2足分か下着数枚分か、そういうスケールの話だ。これが売れているということの意味を考えると、少し複雑な気持ちになる。一人暮らし、あるいは同居しているけれど洗濯を一緒にしたくない、あるいは毎日細かく洗いたい——理由は人それぞれだが、「洗濯機を回すほどではないが、手洗いも面倒」という感覚が気になっていた人なら分かるはずだ。持ち運び可能という仕様が、この機械の想定されている使われ方の多様さを物語っている。
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春の生活者が選んでいるのは、利便性でも節約でもなく、「自分の生活の細部に介入する権利」だ。その欲求が、温度調節付きケトルや発酵機器やバケツサイズの洗濯機という形をとって現れているとしたら——暮らしの「内側」に向かうこの流れは、もうしばらく続く。


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