四月の声を聞くと、日本のネット通販は奇妙な活気を帯びる。新生活という言葉が空気を満たすこの季節、実際に売れているものを並べてみると、何かを「始める」ためのものより、何かを「取り戻す」ためのものが目につく。凝り固まった筋肉、傷つきかけた床、疎かにしていた食と見た目。買い物かごに入るのは商品ではなく、長い時間かけて積み上げた「先送り」への、ちょっと遅れた返済なのかもしれない。
痛みを、自分で狩りに行く
マッサージガンが売れている。しかも「小型・静音・コンパクト」という言葉を前面に出したものが。ジムに行く時間はない、整体に通う余裕もない、でも背中と肩甲骨のあたりにある不快感には名前がついていて、場所も分かっている。一万三千円台というのは、整骨院二回分とほぼ同じ金額だ。255件のレビューに4.69という点数がついているのは、買った人間が「これは効いた」と感じたからというより、「自分でなんとかできた」という感覚そのものに満足したからではないかと思う。
一万五千人以上が、冷蔵庫の下を気にしていた
レビュー数が一万五千件を超えているという事実の方に、少し驚く。冷蔵庫の下に敷くクリア素材のマット、二千九百三十円。この商品が語っているのは、「床が傷む前に手を打ちたい人間」がこれだけいるということだ。冷蔵庫を買い替えたとき、あるいは引越し直後、「下に何か敷いた方がいいかな」と思ったことがある人なら分かる感覚——あの小さな棘が、ずっと刺さったままだった人がこれだけいる。透明にこだわるのも面白い。隠すのではなく「床を見せたい」という美意識の発露で、生活の解像度がじわじわ上がっている証拠だと思う。
「食を直す」ために、器具に一万五千円を出す人たち
ショップジャパンのソイリッチ、一万四千九百九十円。この種の健康系キッチン家電が売れるとき、買っている人間の動機は大抵「もっとまともなものを食べたい」という曖昧な焦りだ。プロテインを飲み始めたが続かなかった、健康食品を買い溜めたが賞味期限が来た、という経験のある人なら分かるが、器具に一万五千円を出す人間は、習慣にしようとしている。消耗品を買い続けるのではなく、道具を買うことで自分にコミットしている。1,688件のレビューは、その覚悟が実際に続いた人間の数だと読める。
五千円のアイロンが「楽天一位」になるまで
ヘアアイロンが四千九百八十円で七千件超のレビューを集めている。美容室の技術を家庭に持ち込もうとする試みは昔からあるが、この価格帯でここまで評価されているのは、雑誌LDKの検証が「高い機種と大差ない」と結論づけた情報が広まったこととも無関係ではないだろう。専門誌がそう言ってしまえば、人は躊躇なく安い方を選ぶ。7,058人が試して積み上げた4.68という数字が、次の購入者の背中を押す——その連鎖がどこまで続くか、見ていて飽きない。美容師に頼らず自分の髪を整える、その先にあるのは節約ではなく「自立」という感覚に近い何かだ。
——
「整える」という言葉は、もともと乱れたものを元に戻す動詞だ。四月の通販ランキングに並ぶこれらは、みんな揃って「戻す」ための道具である。何が、いつから乱れていたのかは、買った人間だけが知っている。


コメント