四月になった。街は新入社員と引越し業者と桜でごった返し、何かが始まる気配だけが宙に浮いている。こういう季節に人は妙に「生活を立て直そう」という気持ちになる。ジムに入会するのではなく、家の中を整える方向に。外ではなく、内へ。今の楽天家電ランキングを見ると、その心理がくっきりと浮かび上がってくる。
「自炊はしたい、でも料理はしたくない」という正直な欲望
レコルトの自動調理ポットが楽天一位に居座り続けている。7400件超のレビューで星4.7という数字は、家電としては異常なほど高い。値段は1万3200円。「安くもなく高くもない」絶妙なラインだ。
この商品が売れている理由を「便利だから」で済ませるのは少しもったいない。本当のことを言えば、これは「自炊への罪悪感を解消する装置」として機能している。健康に気を遣いたい、添加物は減らしたい、でも帰宅後に包丁を握る気力がない——そういう人間の内側にある矛盾に、この機械はひっそり寄り添う。材料を入れてボタンを押すだけで、「今日も自炊した」という事実が生まれる。その「事実」に、1万3200円を払う人が万単位でいる。(→実物はこちら)
2981円で「水道水への不信感」を買い取る
クリンスイの蛇口直結型浄水器が17%オフで3000円を切っている。3100件以上のレビューがついているという事実が、何かを物語っている。水道水をそのまま飲む行為に、いつの間にかうっすらとした抵抗感を持つようになった人たちが、この国にどれほどいるか。ペットボトルを買い続けることへの環境的な後ろめたさと、水道水への漠然とした不安の間で揺れている人間に、2981円という値段は「これで解決した」と思わせるのにちょうどいい。高すぎず、安すぎない。罪悪感を消すための出費として、絶妙に納得感がある。
「掃除機に5万円」を迷わなくなった人たちのこと
シャークのコードレス掃除機が半額セールで4万5375円。半額でこの値段というのは、定価が9万円近いということだ。256件のレビューで星4.59という数字を見ると、買った人のほぼ全員が納得している計算になる。少し前まで「掃除機に5万円」は贅沢品の象徴だった。それが今は「まあ妥当な投資」として処理されるようになっている。家にいる時間が長くなり、床の汚れが目に入る時間も長くなった結果、「ちゃんとした掃除機」への需要が静かに底上げされた。外食を減らした分、家の道具にお金をかける——その価値観の変化が、この価格帯の掃除機を普通の選択肢にした。
毎朝6万円の機械がコーヒーを淹れる、という幸福について
デロンギのマグニフィカSが5万9330円で楽天一位になっている。全自動エスプレッソマシンだ。「一位」という肩書きがついているが、249件のレビューという数は、他の商品と比べてそれほど多くはない。それでも売れているのは、この商品を買う人たちが「比較検討」を終えた後に買っているからだと思う。朝、会社に行く前に自分で淹れたエスプレッソを飲む。その6万円の機械が生み出す5分間に、どれほどの価値があるか——それを一度想像してしまった人間は、もう後戻りできない。
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「生活を豊かにする」という言葉は、外に出かけることとイコールではなくなってきている。むしろ今の人たちは、家の中の摩擦を一つずつ取り除くことに、お金と時間をかけるようになった。その選択が正しいかどうかより、それが今の生活者の「リアル」だということのほうが、ずっと興味深い。


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